大幅に改良されたアウディ A4(B8)には、BMW 3シリーズへの対抗心があった【10年ひと昔の新車】

2011年10月にBMW AGが3シリーズのフルモデルチェンジを発表する中、12月にはこれに呼応するかのように、アウディAGからA4(社内コードB8)のマイナーチェンジが発表された。Motor Magazine誌はドイツ国内で行われたこのA4の試乗会に参加しているが、内外装のデザイン変更や新しい1.8TFSIエンジンの搭載、低燃費化の実現など、話題は非常に豊富だった。BMW 3シリーズのフルモデルチェンジに対抗して、アウディ A4はどう変わったのか。ここではドイツ国内で行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年2月号より)

フロントグリルはよりシャープに、より立体的に

現行の4代目アウディA4(社内コードB8)は、2007年秋のデビュー時から、メルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズとともにドイツ御三家の一角を担ってきた。

インテリアの上質感や快適性、走りに関しても十分に戦える実力を備えていたことに疑いの余地はない。しかし経年による変化は厳しく、現在ドイツでの販売台数はCクラスはおろか、フルモデルチェンジ直前の3シリーズにもあと一歩及ばない状況にある。もちろんアウディもそこは計算済みで、今回のフェイスリフトでは主力モデルの復活という重要な意味を持っているのである。

12月初旬、新型A4の試乗会は、雪がちらつき始めたドイツとは対照的に、まだ暖かな陽射しが感じられる大西洋に面した南欧ポルトガルのリスボン郊外で行われた。

試乗会場の駐車場に並んだ新型A4は、シャキッとリフレッシュした印象を受ける。フロントまわりはグリルやバンパー、ヘッドライト、ボンネットなど、すべてが刷新されている。従来モデルがエレガントで上品なイメージだったのに対し、新型はそのキャラクターを受け継ぎながら、中に秘めていたスポーティさを引き出した感じである。しかし相変わらず他のアウディのモデルとの近似性は強く、100m離れるとA6と見間違えてしまう。

一方、中身は見た目以上に改良が施されている。まずシャシは、走行性能と快適性の向上を目的に、従来から90%も設計が見直された。注目は完全新設計の電動パワーステアリングで、直進時にアシストを完全にカットして電力消費を抑え、燃費改善を図っている。その効果は100km走行あたり0.3Lにもなるという。ほとんど直線のような緩いカーブを走行中、スイッチがオン/オフするような感覚が手に伝わってくるが、ステアリングフィールは基本的に自然で、ドライバビリティに問題はない。

次にエンジンだが、もっとも注目すべきは新開発の1.8TFSIだ。このエンジンは、直噴と非直噴のインジェクターを併用しているほか、ターボチャージャーやバルブ制御、冷却システムなど、多岐にわたって新たに設計された新世代ユニットである。125kW(170ps)の最高出力は従来と同じだが、最大トルクが280Nmから320Nmへ増大している。燃費性能も欧州テストサイクルでセダンが100km走行あたり5.7L(日本式にそのまま換算すれば17.5km/L)で、従来から18%も改善され、同時にCO2排出量もわずか134g/kmに削減されている。ちなみに新型A4は、前述の電動パワーステアリングに加えてスタートストップシステムの全車標準化などにより、全車平均11%の燃費改善を達成している。

乗り心地も従来から確実にレベルアップ

注目の1.8TFSIを搭載した新型A4は、FFのセダンでの試乗となった。その走りは、わずか1400rpmから最大トルクを発生させるエンジン特性のおかげもあり、実用上十分以上の力強さを感じさせる。またもともとコンパクトなエンジンが、従来から3.5kg軽量化されたこともあり、軽快な走りが楽しめるクルマに仕上がっている。

しかし、クルマとしてのバランスがもっとも取れているのは、従来型と同様に新型も2.0TFSIクワトロである。155kW(211ps)と350Nmのパワーは従来と同じだが、十分にパワフルでレスポンスも良く、非常に扱いやすいエンジンは、クワトロシステムとの組み合わせも秀逸である。その走りは俊敏性と上質感を併せ持った完成度の高いもので、乗り心地も従来から確実にレベルアップしている。この印象はセダンでもアバントでも、オールロードクワトロでも同様だ。

スーパーチャージャー付3L V6を搭載する3.0TFSIクワトロは、200kW(272ps)のV6と変速がスムーズな7速Sトロニックとの組み合わせで、高速クルージングで良さが光る。キャビンへ侵入してくるノイズや振動も少なく、快適な移動空間を提供してくれる。

245kW(333ps)の専用3.0TFSIを積むS4は、快適性を保ちながら驚異的に速いクルマに仕上がっている。500psを超える昨今の超高性能セダンほど速くはないが、驚くほどしなやかな足まわりが、圧倒的なスタビリティと想像を超える快適な乗り心地を両立しているのだ。減速時のブリッピングも瞬時に切れよく行われ、ドライバーは全身でハイテク満載のクルマに乗っている感覚を味わうことができる。

果たして新型A4は攻勢に出ることができるのか、断言はできないが、今回の試乗を通してそのための準備は確実に遂行されたと実感できた。

なお、新型A4/S4は2012年1月末にドイツを中心としてヨーロッパで発売されるが、ドイツにおける価格は、エントリーモデル1.8TFSIが3万900ユーロ(19%の付加価値税込:約320万円)からとなっている。(文:木村好宏)

アウディ A4 1.8TFSI 主要諸元(欧州仕様)

●全長×全幅×全高:4710×1830×1440mm

●ホイールベース:2810mm

●車両重量:1510kg

●エンジン:直4DOHCターボ縦置き

●排気量:1798cc

●最高出力:160ps

●最大トルク:250Nm(25.5kgm)/4500rpm

●トランスミッション:CVT

●駆動方式:FF

(2011年12月当時)

2026-01-09T21:17:08Z